問題(Problem)と既知のエラー(Known Error)
ITILでは下記のように"問題"と"既知のエラー"を定義しているようだ(参考書などをベースにして)。
- 問題(Problem)
- 1つ以上のインシデントの特定できていない根本原因
- 既知のエラー(Known Error)
- 根本原因とワークアラウンド(迂回策)が明文化された問題(Problem)
つまり"問題"について調査した結果、根本原因とワークアラウンド(迂回策)が見つかれば、その時点から"既知のエラー"と呼ぶことになるということだ。なぜ"エラー"という言葉がここで出てくるのか。なぜ"既知の問題"ではないのだろう。しかも英語の定義なんて"A Problem that has a documented ・・・"なんて感じでいきなり"A Problem"ですよ。おいおいエラーとかいっておいていきなり問題ですって。
Errorの認識に齟齬があるのが違和感の原因
"エラー"なんてこの業界ではありふれた言葉なのでまさかITILで用語を定義していると思っていなかった。実際に"問題"と"既知のエラー"について定義を記載している参考書はいくらでもあるが、"エラー"の定義を書いている参考書は見ていない。これを書かないのはまずいと思うんだけど。
ITIL(R) V3 Glossary: Glossary of Terms and Definitions より
- Error
- A design flaw or malfunction that causes a Failure of one or more Configuration Items or IT Services. A mistake made by a person or a faulty Process that impacts a CI or IT Service is also an Error.
- エラー
- 1つ以上の構成アイテムや ITサービスの障害の原因となる、設計上の欠陥または不具合。CIやITサービスにインパクトを与える人的なミスや欠陥のあるプロセスも、エラーである。
"エラー"という言葉にITILが『設計上の欠陥または不具合』という意味を持たせているとなれば、"既知のエラー"は"既知の不具合"であり、"既知のバグ"と言い換えても誤りではない(含むという意味で)事がわかる。問題の根本原因が"欠陥や不具合"であるというのは直感に一致する。ちなみに、通常の"Error"の意味は下記の通りで『mistake(誤り、間違い、失策)』であり、どうしても"欠陥または不具合"という事実とは異なるニュアンスになってしまう。もちろん設計上の欠陥または不具合を作り込むのは人による誤りではあるが...
Oxford Advanced Learner's Dictionary より
- Error
- a mistake, especially one that causes problems or affects the result of something
Problemとは何物か
"問題"の説明に、"未知の根本原因(Root cause)"という言葉がよく参考書に登場するが、実際に定義を確認してみると cause であって Root cause ではない。書き忘れなのか、意図的な差なのかが気になるところ。おっと・・・どうやらV2とV3で "Problem" の定義が違うようだ。これがどのような意図なのかは確認できていないが、わざわざ変えてきたということは何らかの意図はあるのだろう。
どうやらITILv2とITILv3で問題管理プロセスが変わっているようだ。問題コントロールとかエラーコントロールという言葉がなくなっている。分かりにくかったから問題管理ライフサイクルなんて言葉にまとめたのかな。・・・とりあえずITサービスマネージャの対策としてはv2準拠だが...
ITIL(R) V3 Glossary: Glossary of Terms and Definitions より
- Problem
- A cause of one or more Incidents. The cause is not usually known at the time a Problem Record is created, and the Problem Management Process is responsible for further investigation.
- 問題
- 1つまたは複数のインシデントの原因。原因は、通常、問題レコードの作成時には未知であり、問題管理プロセスがさらに調査を行う。
- Known Error
- A Problem that has a documented Root Cause and a Workaround. Known Errors are created and managed throughout their Lifecycle by Problem Management. Known Errors may also be identified by Development or Suppliers.
- 既知のエラー
- 文書化された根本原因とワークアラウンドがある問題。既知のエラーは、問題管理によって作成され、ライフサイクルを通じて管理される。既知のエラーは、開発者またはサプライヤによって特定される場合もある。
ITIL(R) V2 Glossary: Glossary of Terms, Definitions and Acronyms より
- Problem
- The root cause of one or more incidents.
- Known Error
- A Problem that has a documented Root Cause and a Workaround. Known Errors are created by Problem Control and are managed throughout their Lifecycle by Error Control. Known Errors may also be identified by Development or Suppliers.
- Error
- A design flaw or malfunction that causes a Failure of one or more Configuration Items or IT Services. A mistake made by a person or a faulty Process that impacts a CI or IT Service is also an Error.